理事会評議員会の同時開催ウルトラC!
2011年8月4日

公益総研 非営利法人総合研究所
首席研究員兼CEO 福島 達也

 

いよいよ移行期限まで折り返し地点を過ぎた。



申請の現場ではいろいろなことがあるものだが、結構法人側から質問があるのが、今後の会議のあり方だ。

今まで、理事会と評議員会を同時にやっていた財団法人は結構な数あった。

実際に私も、その場で講演したり相談に答えたりする機会が多いので、「私のためにわざわざ理事と評議員を全員集めてくれたのだ」と感激していたら、何のことはない、決算後の定例の理事会評議員会だったなんてことは、結構よくある。

出番まで、決算報告などを別室や後ろの席で聞いていたので、同時開催だったのだろう。

同時開催以外にも、同日開催なんてのも良くある話で、「評議員会と理事会を続けてやるので両方出席して欲しい」と頼まれることもしばしば。

まあ、社団法人で、理事会と総会を同時にやっているところは見たことないが、こちらも同日開催は経験がある。



何が言いたいかというと、同時や同日の開催は新法ではできないということが言いたいのだ。

新法では、法人法の199条で準用する129条1項で「・・・計算書類等を、定時評議員会の日から2週間前の日から5年間、その主たる事務所に備え置かなければならない。」と定めている。

また、法人法第125条には、定時社員総会(評議員会)の招集通知には、必ず理事会で承認を受けた計算書類等を事前に社員(評議員)への提供しなければならないと決められている。



つまり、決算を承認するための評議員会(総会)は、理事会を先に開催してから2週間経たないと開催できないということなのだ。同時もダメだがもちろん同日もダメだ。

これに違反すると100万円以下の過料に処す(法人法342条8号)とあるから、私が出席したあの財団法人は、あのままでは毎年100万円も罰金を取られるのだろうか。かわいそうな気もするが・・・。



しかし、うまいことを考える人もいたもんで、定時評議員会の2週間前までの日付で、みなし理事会による決議の省略という方法を使えばいいなんてことをする団体が現れた。

まあ、確かにそういう方法もあるのかも知れないが、それって、本当に大丈夫だろうか?

法律ではなく、常識でという意味だ。

理事ともあろう者たちに対して、議案の説明は文書だけでして、とにかく承認しろというのは、結構冒険に近い。

私の経験上、評議員よりも理事の方が文句を言う人や質問する人が多いのが一般的である。そういう人たちに対して、有無も言わせず、書類を読んで、黙って承認しろというのはなかなか難しいだろう。

確かに、みなし理事会で計算書類等を承認してもらい、書類を2週間備え置きながら、定時評議員会を招集すれば、評議員会は開催できる。

もちろん、その評議員会開催時に理事と評議員を同時(同日)に集めるためなのだが、既に書面で承認してもらった理事は何のために来るのか。

集められた理事も、承認した後に質問することに抵抗はないだろうか??

私ならいやだ。

まあ、懇親会や食事会が用意されていることが多いので、それを食べに来るだけの目的の人なら文句もないだろうが、理事は懇親会要員ではない。



もちろん、同時ではなく同日開催の場合は、順序は、評議員会、理事会とするのだろう。だって、評議員会で選任された理事の中から代表理事を選定する場合があるからだ。

しかし、みなし理事会が終わっていて、評議員会も終わって、すべての議案が成立した後に最後に理事会をやっても、すべて決まった後に何を言えばよいのか・・・。やっぱり懇親会目的としか言いようがない。



そこで、私は誰も文句を言わないウルトラCを考えた。

やり方はこうだ。

まず、同時に理事会と評議員会を開催する。

ここでは、決議は理事会決議だけにするのだが、議案の説明は評議員の人たちにもするし、質問も大いに受け付けよう。

とことん議論して決議だけは理事会だけにしてもらうのだ。評議員会の決議は先延ばし。

そして、その決議事項を事務所に備え置くと同時に、評議員には、「みなし評議員会」の議案として提案(通知)し、同意書を渡すのだ。

すでに、聞きたいことは聞き、いいたいことを言う機会を与えられた評議員たちも、いくら「みなし評議員会」といっても、これなら納得して同意書を書いてくれるだろう。

2週間以上経って、評議員全員の同意書を集めれば、これでみなし評議員会は成立だ。何とも非の打ちどころのないやり方ではないか・・・

まあこのやり方は、まだどこの法人もやっていないから「福島式同時開催法」と名付けよう。



ただ、欠点もある。

理事長や専務理事等の互選(選定)がその場で(評議員会の開催と同時に)できないことだ。

だから、できれば理事の入れ替えをする年度(最低でも2年に1回)はこのやり方をしない方がいいだろう。

でも、役付理事の互選(選定)だけだったら、ほぼ既定路線の人事や同じ人を重任する場合などは、評議員会後に、「みなし理事会」をやってそこで決めても良いかもしれない。そうであれば、このやり方はいつでも通用することになるだろう。

その他、何が何でも2週間あけろというものでもないことも知っておこう。2週間の根拠は、法人法129条なので、決算に関わる評議員会(総会)だけだ。

だから、予算や事業計画、その他の議決事項については、理事会開催後、招集通知の期間だけ間隔を取ればいいし、もっといえば、招集日はずっと前から1決めておいて先に通知しておけば、同時に開催しても特に問題はない。



新法から評議員会(総会)は年2回の開催ではなく、年1回の開催で良くなったのだから、そう改めた法人も多いだろう。

そうなると、年にたった1回の評議員会を理事会と同時に盛大にやりたいという法人の考えもわかる。だからこそ、「福島式同時開催法」を活用して、同時だが、理事会だけ決議し議事録を作り、評議員にはその場で提案書と同意書を渡し、後日同意書を提出してもらって「みなし評議員会」を開催するという方法を取ればよいだろう。



まあ、ちゃんと2週間空けて別々にやるのが一番だが、震災後、節電や経費削減の昨今、まんざら他人の話しではなくなるかもしれない。

とにかく、今後は理事会や評議員会(総会)の開催には十分注意して欲しい。





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